空想科学辞典「マネー・ショート 華麗なる大逆転」
サブプライムローン問題が引き起こしたリーマンショックと認識されている経済ショックの中、大金を得た人達の話です。
東京MXで20191201に放映と二月にBS12で放映された字幕版を鑑賞しました。
この映画に関しては出てくる用語が細かく、字幕は文字数が少なく、吹き替え版を推奨します。
字幕だと、ストーリテラーのベネットが、あるセリフを印象付けるためか、もともとかボソボソ喋り、眠くなるのは請負ます。
地上波ではバウムの奥さんシンシア、ドクターフーのエミーちゃん、中国の数学者のシーンは完全にカットされています。
サイオンキャピタルのバーリに対し、出資者のローレンスが訴訟を起こしたらしいのですが、この辺やら、「金を返せこのペテン師野郎」の後のやり取りも見たかったですよ。
小説「世紀の空売り マイケル・ルイス著」を読むと、人名が異なっていたりしますが、映画になりにくい題材を上手に映画にしたと思います。人名と会社名は小説、映画、事実と異なるようです。
小説には日本の会社が二社出てきます。一社はさすがに名が伏せられていますが、もう一社、モーゲージ債CDOの最後のカモとして、みずほ証券が出てきます。
著者のマイケル・ルイスさん、日本の金融業界も変なところがあるとみているらしいです。
映画で一番大事なところは日本語で教えてもらえます。
注意:
以下、私の専門外の世界の用語を調べた為、いつもよりネタバレに近いところまで解説しています。
【出典】映画:マネー・ショート 監督:アダム・マッケイ
【ルイス・ラニエール:Lewis Ranieri】『人名』
ソロモンブラザーズに所属し、1977年に不動産担保証券「住宅ローンモーゲージ債」の仕組みを作る。
住宅ローンは個人の30年固定金利。リスクが少ないが、回収に30年かかる。これを集めて債権として販売した。銀行は、金利変動、貸し倒しのリスクがなくなり、キャッシュフローが改善、手数料を得て莫大な利益を得た。
【ジャレッド・ベネット】『人名』
ドイツ銀行に勤める銀行員。
モーゲージ債のCDS売買を聞きつけ、サブプライムローンの危機に気付き、CDSを売りまわるが、社内からはバカ扱いだ。
フロントポイントパートナーズに間違い電話をかけ、マーク・バウムらがCDSを知るきっかけとなる。
新型レプリカント、ブレードランナーそっくりである。
【モーゲージ債:Mortgage-backed Securities,MBS】『人名』
ルイス・ラニエールが考案した住宅ローンモーゲージ債。不動産担保証券。略してMBS。
銀行から厳しい審査を受けて住宅ローンを組んだ人は、毎月手堅く銀行にお金を返す見込が極めて高く、住宅という担保も確かなものである。
モーゲージ債は銀行が受けた住宅ローンを纏めて(プールするというらしい)担保に債権として売り出した金融商品。
銀行は、金利変動、貸し倒しのリスクがなくなりキャッシュフローが改善、手数料を得られる。
米政府機関から発行、元利金払いの保証がなされており、その信用力は非常に高く(AAA格)リーマンショックまではアメリカ国債と同じ格付けだった。
【マイケル・バーリ Michael Burry M.D.】『人名』
サイオンキャピタル社のマネージャー。医学博士。
幼い頃、病気で左目を失い、一人でいるほうが気が楽な性格になった。
医学博士であるがローレンスを顧問に投資会社を興している。靴を履かずラフな服装で勤務している。
2005年3月にはモーゲージ債の破たんを予見し、ゴールドマンサックス他の投資銀行に対し、住宅モーゲージ債合計13億ドル分のCDS発行を持ちかけた。
劇中の曲調からするとメタルがお好きなようである。バットマンのブルース・ウエインそっくりである。
【サイオンキャピタル:Scion Capital LLC】『社名』
医学博士マイケル・バーリがマネージャーを務めるサンノゼにある投資ファンド。ローレンスが顧問、資金を提供している。
モーゲージ債の破綻をいち早く予見したバーリが$13憶ものCDSを購入、住宅債権は盤石と疑わない出資者のローレンスともめるが、リーマンショックで489%の運用益を出す。
【マーク・バウム:Mark Baum】『人名』
怒れる投資家。モルガンスタンレーのヘッジファンドフロントポイントのオーナー。
ユダヤ神学校時代、極めて優秀なのだが、タルムードから神の世界の矛盾を探そうとしてラビに問題児扱いされた。
自社フロントポイントに間違い電話をかけたドイツ銀行のジャレッド・ベネットからモーゲージ債のCDSの存在を知り、住宅ローンの実態調査にかかる。
【フロントポイントパートナーズ:FrontPoint PARTNERS】『人名』
投資銀行モルガンスタンレー傘下のマーク・バウムが運営するヘッジファンド。
ダニエル:敏腕アナリスト。幼いころ父親を殺された。
ポーター:ボート競技のオリンピック代表。前の会社からの付き合い。
ダニー・モーデス:トレーダー。ドイツ銀行の間違い電話を受ける。
【サブプライム:subprime】『金融用語』
優良Primeの下を表すSubとの合成語。多くは変動金利ローンで、地価の上昇に伴い借り換えを行って金利上昇を吸収する「予定」で貸出が行われた。
つまり、信用力以上の借入れで不動産を得るローンに使われた言葉で、クソって意味。わかった?
【債務担保証券:Collateralized Debt obligation,CDO】『金融用語』
複数の債権を集めた債権。
売れ残ったBからBBBのモーゲージ債を組みなおした債務担保証券。格付け機関がAAAをつけてくれるので再び売れる。
例えるなら、シーフードレストランで金曜日に売れ残ったカレイを捨てると損失を確定することになるが、シチューにして日曜に売れば、利益が出せる。アメリカ長期国債並みに優良だといわれているが、犬のクソをネコのクソでくるんだもの。
私見であるが、「卵は一つのカゴ盛るな」の悪用で、Aを混ぜ、貸倒率は少ないですよと偽装した商品であり、これだけこねくり回した商品名に「担保」が入るのは詐欺ではないだろうか。
【合成CDO】『金融用語』
実際に賭博している人たちの勝負の勝ち負けを賭ける。この人たちの勝負を賭けたり二階建て、三階建ての賭けの市場ができる。
モーゲージ債のCDO、さらにCDOへの賭けのCDSに対するCDO。レバレッジ20倍の理解しがたい商品。
【クレジットデフォルトスワップ:Credit default swap,CDS)】『金融用語』
該当する債務の不履行時に利益を得る金融商品。
CDSを発行する機関は、債務の当人ではなく、賭博で言う胴元が判りやすい。
生命、自動車等で損失時に補填する保険に似ているが、CDSは、胴元を通して他人の財産に賭ける商品。
保険料を支払い続け、損失が起きた時に、大きな利益を得る仕組みであるが、対象が自分の財産ではないので、一般に理解される保険商品とは本質的に違う。
サイオンキャピタルのマイケルバーリがゴールドマンサックスに対しモーゲージ債のCDSの発行を要請した。
発行機関の倒産もリスクとして理解しなくてはならない。
【ファイコスコア:FICO Score】『金融用語』
300から850の値で示される。550以下はクソ。クレジットカードのブラックリストとかこれの事。
参考「アメリカ生活とパーソナルファイナンスの情報シェアサイト」
https:/
【ベアスターンズ:Bear Stearns】『社名』
ありえないCDSを出して、ブラウンフィールドファンドが目をつける。
私的ファンドに目をつけられるくらいだから、リーマンショックで倒産、JPモルガンチェースに救済合併された。
【ブラウンフィールドファンド】『社名』
チャーリー・ゲラーとジェイミー・シプリーがコロラドで始めたファンド。
11万ドルで始め、三年で3000万ドルに資本を増やし、ニューヨークに進出。
小説とは名称と所在地が異なる。
【ベン・リカード】『人名』
元JPモルガンのトレーダー。金融業界にへきえきしてトレーダーをリタイヤ、コロラドに住む。
ブラウンフィールドファンドの二人と、犬の散歩で知り合い、モーゲージ債のCDS取引の口利きを依頼される。
ベンを演じるのはブラッドピットです。
【ABX指数】『金融用語』
サブプライムローンの格付け指数。
格付けは半期ごとの年月で表され、ABX B 05-1は 格付けBの2004年後期に発行されたものを表し、最高を100とする指数である。
【ホットハンド】『金融用語』
ある選手が続けてシュートを決めると誰もが次も決まるハズと思い込む心理の事。
人は現在起きている幸運が、今後も続くと思い込む。
「バスケットボールにおけるホットハンド」論文による。
1989年パリーグ優勝争いは3チームがもつれた中のダブルヘッダー第一試合、ラルフ・ブライアントが三連続ホームランを放ち勝つ。二試合目、敬遠の後、同点で迎えた打席、ホットハンドを期待した4連続ホームランは実現して、首位に返り咲きマジック2。脳内モルヒネドバドバであった。
【トランシェ:Tranche】『金融用語』
A tranche is Franch word meaning "a portion of something."
フランス語で切り分けるの意味。
金融業界では債権を集めて、大体同じリスクの商品で輪切りにすること。
【ISDA契約:ISDA Agreement】『金融用語』
An agreement that lets an investor sit at the "big boy table" and make high level trades not available to stupid amateurs.
Trying to be a high stakes trader without an ISDA is like trying to win the Indey 500 riding a llama.
ISDAの同意書が無ければインディ500をラマで走るようなものである。
JPモルガンチェースにおいてISDA契約するには15億ドル以上の資本が必要である。
私見では、資本を確認される辺り、信用取引よりも現物から遠い、倍率が高い取引を行う契約なのかと思う。
【忍者ローン:NINJA loan】『金融用語』
収入無し、仕事なしのローン。信用調査もなし。金曜の午後に書類を作り、月曜には承認される。
野村証券HP 証券用語解説集によると「米国で金融危機を引き起こした「信用力のない人たちへ貸し付けられるローン」のことを、英語で「無収入(No Income)、無職(No Job)、無資産(no Assets) 」の頭文字(N.I.N.J.A)をとって「ニンジャローン」と呼ぶことがある」
【ストリッパー】『職業』
通称、ポールダンサー。
職業としては個人事業主。セラピスト。
FICOスコアは低いが現金を持っている。
【NOBU】『店名』
世界で有名な日本食レストラン。
ラスベガスで行われた金融フォーラムの後、メリルリンチ系の合成CDOの担当者とフロントポイントパートナーズのバウムが会食したレストランはNOBUだと思われる。
ブログを見ると日本人には料理の種類、値段等で極めて不評である。
小説ではオカダ・レストランとされている。
【格付け】『金融用語』
債権につけられる、貸し付けに対して約束通り返済が行われる可能性を表す格をつける行為。
上位からAAA(トリプルA)AA、A、BBB、(略) C,Dであらわされ、BやBBはFICOスコアが550以下のクソ、1-4%の貸し倒れ。
サブプライムモーゲージ債や、CDOの格付けを行うのはムーディーズ、スタンダード&プアーズ等の会社。リーマンショック前、これが公正に行われなかった。格付け依頼する銀行が望む格付けをしなければ別の格付け機関に行くからだ。
格付けの文書の文末に「安全性、商品性、及び特定目的への適合性その他一切の事項について、いかなる保証もしていません」とあり、無責任なのにも拘わらず重要視されるええ商売ですわ。
無責任な格付けを行った行為はリーマンショックの責任の片棒を担いでおり、S&P、またはムーディーズ社から逮捕者がでるべきである。
アメリカETFで有名なSP500指数のSPはスタンダード&プアーズのSP。これでSPが嫌いになったらSP500のETF買うのやめてNYダウのETFにしよう。と思ったらダウジョーンズの前にSPが付いています。こうなったらバンガードです。
【ベニー・クリーガー】『人名』
投資銀行JPモルガンのトレーダー。
サブプライムローンの破たんを予想し、格付けBBBのCDSを20憶ドル購入。CDSの保険料を払うため、トランシェAとAAが破綻しないと目論み、CDSのAとAAを売り、この保険料をBBBのCDS保険料支払に当てていた。
すべてのトランシェが破綻したリーマンショックで、CDS保険料の支払額が受取額を大きく上回り、約140憶ドルの損失を出した。
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金融が難しいってこの辺わからないからです。
CDSを発行するのは投資銀行で、CDOを全く持たないサイオンキャピタルがCDSを購入します。最終的にCDOを購入するのなら株式で言う信用取引の「売り」行為ですが、そういう取引ではありません。価格が下がると保険料の流れが逆転する仕組みのようです。「他人に健康保険」に近い取引が頭に入りません。遊びに近い「賭け事」ですよね?
保険料を出している側の資本が減ると契約自体が無効になるとか訳が分かりません。
ジャレッド・ベネットはドイツ銀行に勤めています。債券相場が暴落した場合、CDSを売っているベネットは手数料は入ったでしょうけどドイツ銀行はデフォルトが起きた場合、支払う側です。なんですごいボーナスがもらえたんでしょう。
CDSって破綻時に支払い免除で担保無しって感じなの?
債券価格が下がると保険料を受け取り、CDS破たん時に大金が受け取れるはずが、バーリ達は直前で売り払っています。
バーリの目論見ではCDOの価格が下がるとCDSの価格が上がり保険料がこちらに来るはずが、なかなかCDSの価値が上がりません。この理由が語られていません。銀行がずるしたから?この後、しれっと売却して大金を得ます。バーリの味わったこの辺の スリルの表現がいまいちだったかなあ。
さて、この映画の背景を時系列に見てみよう(史実)
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2005/03/xx マイケルバーリがモーゲージ債に変動金利サブプライムローンが多量に含まれる事に気が付く。
2007/01/11 モーゲージ債の延滞が100万件を超えると報じられる。
2007/04/02 ニューセンチュリーファイナンシャルが破綻。3200人解雇
2008/03/14 投資家ブルース・ミラーとヘッジファンドマネージャー、マーク・バウムの(*1)公開討論が行われる最中、ベアースターンズの株価が38%下がる。
2008/03/16 財務長官Hポールソン アメリカ経済は盤石と演説
2008/09/15 ベアースターンズ、カントリワイド、リーマンブラザーズ破綻。世に言うリーマンショック。
(*1)人名は史実とは異なる。(ビル・ミラーとスティーブ・アイズマン)
こういう状況において2007年3月に日本の会社が出したモーゲージ債に対する見解である。
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文末に責任がない事を書いているが、こんな感じでお気楽なものである。
小説において最後のカモと載せられたのは日本の証券会社だった事を覚えておこう。
日本においても金融機関というのはそういうモノだと予め理解して付き合う必要がある。ということをこの映画は教えてくれる。
合成CDOをググると、低金利の中、少しでも金利の高い金融商品を求められ、合成CDOが復活しているらしいです。
懲りないねえ。
銀行や証券会社から勧められた商品は、よく調べてから買いましょう。
【音楽リスト】
吹き替えだとほとんど消えてたりするのでこんなにあるとは思いませんでした。
私の知ってるところから、パンテラ、GnR、メタリカとか日本の曲も二つ入っています。
ようつべで検索するとほとんど出てきます。*は気にいったのでCD探します。
*MASTODON Blood and thunder
Nicholas Britell DOPENESS
*Ludacris - Money Maker ft. Pharrell
Ladytron - Burning Up
SUKIA - Feel'n Free
*The Polyphonic Spree - Lithium
Los Angeles Negros - Tú Y Tu Mirar... Yo Y Mi Canción
Lagrimas Negras - Barbarito Torres
Metallica - Master of Puppets
Gnarls Barkley - Crazy
Kelis - Milkshake
Nicholas Britell - Big Dipper
*Gorillaz featuring De La Soul - Let the Eagle Soar
*Darkest Hour - District Divided
Nick D'Egidio - That's Life
Run the Jewels - Blockbuster Night Part 1
Wayne Newton - Danke Schoen
N.E.R.D. - You Know What
Hideaki Tokunaga - Saigono Iiwake
Nicholas Britell - Neptune
Guns N' Roses - Sweet Child O' Mine
Chocolat & Akito - Minaminami
Pantera - By Demons Be Driven
Vaughan Penn - Bring on the Day
Metallica - Eye of the Beholder
The Pussycat Dolls - When I Grow Up
Neil Young - Rockin' in the Free World
Led Zeppelin - When the Levee Breaks
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